こちらの日本人のお友達に聞くと、瞑想っていうと普通の日本人は禅修業などを連想し、とっつきにくいイメージがあるそうですが、こちらでは瞑想、MEDITATIONは大ブームで、ごく思いがけない方でも、たとえ実行にまで及ばなくても、瞑想をやる意義、そらがストレス緩和法である、などの常識的認識があります。1993年全米ベストセラー - こころと治癒力(心身医療最前線) - ビルモイヤーズ著小野義邦訳でもとりあげられてますが、ストレス緩和法は今アメリカ人の間では一番注目を浴るヘルスケアトピックスでしょうか。
訳者のあとがきにあるように:
現代医学の限界を乗越えるためには、”おばあちゃんの知恵”の類いを科学的に実証することが不可欠といわれる。そのためのキーワードが ”治癒”(ヒーリング)であり、”心”(マインド)なのだ。モイヤーズの関心は、人間が本来的に持つ治癒力にこころがどのような役割を果たしているかをジャーナリストとして解明することであり、専門家からいくつかの意味深い見解を引き出している。
このベストセラーの中で取り上げられる11人の医学士の専門家の一人がJon Kabat-Zinn, PhD・MIT. マサチューセッツ大学医療センターのストレス緩和クリニックを創設、元所長。マサチューセッツ大学医学部予防・行動医学部門、現名誉教授。精神を集中させる瞑想療法により、慢性的な痛みやストレスによる不調に苦しむ患者を助けていることで世界的に知られるている医学博士でおられます。インタビューの一部ですが、おもしろいお二人のQ&Aです。
モイヤーズ記者(Q)初めての患者に瞑想のことを話すと、どういう反応がありますか?
ジン博士 (A)まず、そういう質問がきますね。”そんなの気味が悪くて、誰もやりたがらないじゃないですか” そして ”それ何の話ですか””瞑想とかヨーガとかって、ちょっと待ってくださいよ”っていうでしょう…
そもそも瞑想とは…という古臭い考えを、きれいさっぱり払い落としてしまうのです。私たちはこう言います -さあ瞑想の練習を始めましょう。でも、それは呼吸の仕方ではありません。蓮華座に姿勢で座って仏像のまねをすることでもありません。逆立ちもしないし、何か超自然的なことをするわけでもありません…” とジン博士、医療としての瞑想を説く。
ジン博士:日頃、私たちは機械的に走り回り、しゃべりまくり、ただ忙しいばかりで、自分が何をしているのかわからないまま時を過ごしています。瞑想はそのスピードを落として自分を取り戻し、十分な知覚と意識をもって行動するように導いてくれるのです。
その後、ヨガの愛好者(やっぱり~)でもあるジン博士はヨーガと瞑想訓練のベネフィット・ニーズを解き明かします。この本を読むと何故アメリカではヨーガがこれほど一般で健康維持に必要といった認識が浸透されたか分かります。
ビルモイヤーは70年代以来からは、主にテレビジャーナリストとして有名ですが、元はジョンソン大統領の補佐官(報道担当)を務めたホワイトハウスをすみずみ知り尽くした一流エリートジャーナリスト。彼の教養深い知性と洞察力にはアメリカ世間は敬意を示し、これまで手がけた数々のインタビューなどは特に知識人、文化人の間では常識として知れ渡っています。国民が信頼を寄せるジャーナリスト、ビルモイヤー対ジョン・カボット・ジンのインタビューを手にしたアメリカ人が自然にヨーガスタジオに一斉に走り、フィットネスセンター、ジムもそういった要求に応えヨガスタジオを設けたのもそういった背景があったからこそ。この本がベストセラーリストを飾った頃がきっかけの一つで今日の正当化、西洋化されたヨーガが60年代のヨーガ=異文化・インド発祥地=ヒーピーカルチャーイメージ脱を記するターニングポイントだったのかもしれません。
結局、心をおきざりにしないため、”心を連れ戻す”ためのトレーニングでしょうか。ヨーガはMOVING MEDITATON、体を動かしながら体の調子を整え、無我の”今”だけに精神を集中させる瞑想法で心身のバランスを図るメソッドです。まさに一石二鳥、フィットネスでもあり、又精神的な集中力が生み出す瞑想を通しての癒しでもあり、現代社会を生き抜くための技術。やっぱりMIT出身学者。ジン博士いわく、異文化・異民族インド発祥地であろうが構わず、世代ごとグル伝授で古代から受け継いだ、東洋では禅・仏教の生み親、西洋ではまだ表面しかつっついてない奥深い知恵。簡単に考えると(おじいちゃん)おばあちゃんの知恵のサイエンス化と証するもの、それがヨーガと説くジン博士。謙虚ながらインテリジェンスに基ずいた説得力を持つお方です。